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なめし(鞣し)とは?歴史から種類まで革の基本知識を紹介

2023.05.23 【革の豆知識】

動物の「皮」を「革」に仕立てるには、なめしという工程が必要です。人間が文明を築いていくなかで、動物の皮は常に重要な役割を果たしてきました。しかし、そのままでは腐敗や傷みが進むため、加工して長持ちさせる必要があったのです。その加工方法が「なめし」です。

この記事では、なめしの歴史や種類をはじめ、革製品の特徴など、なめしに関する基本的な知識を紹介していきます。

-なめしとは-

なめしとは、動物の皮を柔らかくして、腐敗や痛みを防ぐ加工技術です。「皮」の主成分であるコラーゲンに耐熱性、耐腐敗性、柔軟性を与え、丈夫で長く使える「革」へ変えていきます。

また、一度なめしをした革は、簡単には元に戻らないという性質があるため、さまざまな用途で使用されるようになりました。なめした革は、加工することによって、次のような特徴を引き出します。

  • 耐久性
  • 柔軟性
  • 防水性
  • 通気性
  • 風合い

これらの特徴を生かして、靴やバッグ、財布などの身近なものから、家具や車のシートに使用するなど、幅広い分野での利用が可能になりました。また、その特徴によって革製品の品質や価値も変わってきます。

-なめしの歴史-

なめしの歴史は古く、人類が動物を狩猟するようになった時代から始まります。防寒に役立てるほか、テントなどの生活必需品に使用するなど、皮はなくてはならない存在だったのです。

しかし、動物の皮は時間が経つにつれて腐り、固くなってしまいます。そのため、人々は試行錯誤を繰り返しながら、皮を長持ちさせる技術を高めてきました。魚や動物の油脂を塗ったり、植物の汁を用いたり、さまざまななめし技術が開発されていきます。

19世紀後半になると、薬品を使用したなめしの技術がさらに発展しました。安定した品質を保ちながら短時間で生産できるようになり、保存性、染色性、耐熱性も向上して、靴やバッグ、衣料など幅広く用いられるようになります。

-なめしの主な種類・加工方法-

なめしには、いくつかの種類があります。使用する原料や技術によって革の風合いも大きく異なるため、製品によって適したなめし方法も違ってきます。

製品として長く使える形にするためには、薬剤などを用いて皮の繊維を柔らかくし、耐熱や防腐などの加工を施す必要があるのです。ここでは、なめしの4つの種類と加工方法を解説します。

クロムなめし

クロムなめしは、化学薬品である塩基性硫酸クロムを薬剤として使った加工方法で、ドイツで開発された比較的新しい技術です。クロムなめしが加工された革を「クロム革」といいます。

ほかのなめし方法と比べると、比較的短い加工時間で多くの量を生産できるため、コストを低く抑えられます。また、耐熱性があり、傷や水への耐久力も高くなる方法です。

特徴として挙げられるのは、発色性のよさです。染色しやすくなる加工なので、同じ製品でカラーバリエーションを豊富にそろえられる利点が有ります。

革製品では、約8割以上がクロムベースで製造されているので、ポピュラーな加工方法といえるでしょう。

タンニンなめし

タンニンなめしは、赤ワインやお茶の渋みの成分であるタンニンを使った植物由来のなめし方法です。古代エジプト時代より行われている最も古い方法で、タンニンなめしが加工された皮を「ヌメ革」といいます。

皮に負担をかけずに、タンニン成分をじっくり染み込ませる加工方法で、非常に手間と時間がかかるなめし方法といえるでしょう。

特徴としては、コシ感があり丈夫な素材のうえ、経年変化とともに柔らかさが増していくところが特筆すべき点です。使い込めば使うほど革に柔らかさが出てきて、色の深みが変化していくので、長い期間をかけながら革の表情を楽しめます。

コンビネーションなめし

コンビネーションなめしは、名前のとおり異なるなめし方法を組み合わせた製法をいいます。基本的には、クロムとタンニンの組み合わせです。

特徴としては、クロムなめしの耐熱性や発色性、タンニンなめしのコシ感や経年変化、その両方を持ち合わせています。

耐熱性や発色性を重視してソフトな仕上がりにするならクロムの割合を多くし、コシ感がありよりナチュラルな革の表情を重視するならタンニンの割合を多くします。そうすることで仕上がりに違いが出て、幅広い用途で使えるようになります。

しかし、配合する比率を安定させるのは非常に難しい技術で、簡単にできることではありません。

アルデヒドなめし

アルデヒドなめしは、アルデヒド化合物を用いたなめしの方法です。アルデヒドの成分が皮の中にあるタンパク質に作用し、化学反応によってタンパク質が柔らかくなります。

クロムなめしに比べると、耐熱性は低く、コストが高い傾向にあります。しかし、地球環境に優しいという特徴があり、現在注目度が高まっているなめし方法です。

-なめしの工程|皮が革になるまで-

動物の皮が、製品として使用できる革になるまでには、製革所で多くの作業過程を経ていかなければなりません。ここでは、なめしの主な作業を順番に解説していきます。

  1. 原皮を腐らないように塩漬けにして保管する
  2. 水洗いで塩分や汚れを落とすと同時に、原皮に充分な水分を与えて清潔な状態にする
  3. 大型の動物の皮は、扱いやすくするために背骨に沿って皮を左右に分割する「背割り」を行う
  4. 石灰水に漬けて脱毛すると同時に、繊維をほぐしていく
  5. 機械を使って余分な脂肪や汚れを削ぎ落とす「フレッシング」をし、再度水洗いをする
  6. 皮を柔らかくしなやかに、なめし加工する
  7. なめした後の革を洗い、必要に応じて油を加え乾燥させる
  8. 厚みを均等にし、注文に応じた厚さに「革漉き」する
  9. 革を伸ばしてさらに柔らかくし、乾燥する
  10. 染料に漬け込んで染色するほか、スプレーで顔料を吹き付ける(染料の場合は、乾燥前に行う)
  11. 型押しやアイロンで艶出しをして仕上げる

このように、たくさんの工程を経て上質な革素材に仕上げていくのです。

-松阪レザー「さとり」の魅力-

高級和牛として知られる松阪牛のレザーは、非常にデリケートな素材であるため、日本国内の限られた製革所でしか作ることができません。一般的な牛皮よりも油分量が多いので、原皮をなめす作業は難しく、製品として使えるように加工するには高度な技術が必要です。

そのデリケートな素材である松阪レザーを使って、唯一革製品を制作しているのがBAMBIです。BAMBIでは、熟練した技を持つ職人たちの手によって、松阪レザーを愉しめる2つの製品を展開しています。

1つ目は「さとり」です。松阪レザーがもたらす艶と風格を体現し、表材と裏材の両方に松阪レザーを使用した贅沢なシリーズです。

2つ目は「さとりナチュラル」です。表材のみ松阪レザーを使用した、良質な松阪レザーをよりお手軽に愉しんでいただけるシリーズです。

松阪レザーを使って、妥協のない物づくりを結実したBAMBIの革製品を、ぜひ手にとってお確かめください。

BAMBIが誇る松阪レザーの革小物について、こちらでもご紹介しています。

-まとめ-

ここまで、なめしの歴史から種類まで革の基本知識を紹介しました。また、希少性の高い革素材である、松阪レザーを使用した商品についてもお伝えしています。

動物の「皮」から「革」になるには、多くの工程が必要です。なめしの技術が発展するとともに、熟練した職人の技によって、革の特徴を生かした製品が作り上げられてきました。長い道のりを経てきた製品は、さらに長い年月をかけて、色や風合いを変化させていくでしょう。

革製品の利点は、長く使用できることです。使えば使うほど味が出て、愛着がわいてくるアイテムになるでしょう。ぜひ好みに合った革製品を選び、お手入れしながら革の表情の変化を楽しんでください。

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